サロマのクラフト作家、上伊澤 洋さんが手掛ける森の詩工房

店名:森の詩工房
住所:〒093-0532 北海道常呂郡佐呂間町字浪速74-4
電話:01587-6-2350
代表:上伊澤 洋 さん

佐呂間のオリジナリティを感じられる物を

クラフト活動を始める前は商工会議所の役員をしていて、当時は振興開発が担当分野でした。道の駅サロマ湖が開業した際に「佐呂間のオリジナリティのあるお土産、工芸品がない」という意見があって、道の駅の中でそういった物を見てもらえる施設があったら良いだろうとなったんです。そしたら「何か良い案がないだろうか」と声掛けがあって。元々若い頃に、2年間くらい専業で民藝品作りをしていたんですよね。それで今の活動につながる、サロマの自然を利用したクラフト品の発案をしたことがはじまりです。

5年掛かりの手作り工房、原動力は物作りが好きな気持ち

作品はお金儲けのために作っているという意識は当時から無いんです。他に本業の仕事もやっていましたし、趣味の延長線上なんですよね。
昔、東急ハンズの世界規模の公募展があったので出してみたんですよ。そしたら東京のお客さんからも依頼があって大きいものを作ったりもしました。他には、子供たちに体験してもらうために学校の先生方と講習したり、他の街でワークショップみたいに作品作りの指導もしました。ネットで販売しないかという誘いもあったけど、量産は大変だし、自分の思ったものを作りたいからお断りしたんです。
あと、実はこのログハウスの工房は基礎工事以外は全部自分で作ったんですよ。朝に作業、日中は仕事、夕方からまた作業してって、5年ほど掛かって完成したのは50〜51才の時かな。原木を仕入れて木の皮むきからやりました。そんなの途中でへたっちゃうと思うでしょう。でも不思議と1回も「やめたい」なんて思わなかったんです。やっぱりそれは、作ることが好きだから、楽しいから。自分の人生の中で1つの生きがいなんです。そのためなら、街から工房まで車で往復30kmの道のりも日々往復できるものなんですよ。

執筆や舞台制作、作品の軸になるのは佐呂間

クラフト作品の他には、本の出版もしています。「風の橋」という佐呂間を舞台にした作品は、林白言(はやしはくげん)文学賞を受賞しました。他には、児童文学も出しています。
昔は芝居もやっていて、「サロマ座」という舞台制作を文化連盟の事務局と20年間くらい手掛けていました。スタッフもキャストも全町に公募して、制作・脚本・演出っていう全体を1つの舞台にまとめる役目を自分が担当していました。3年置きに1回やっていたんですが、北海道文化財団からの依頼で100人規模のかなり大きな芝居をやりきって、それを最後にギブアップです。
基本的に私の作品作りは佐呂間の実在する場所、人、歴史や自然災害をモデルにしています。そうすることでリアリティのある作品作りができるんです。

佐呂間のクラフト作家として、物作りを通して出会う人や体験

色々取り組んではいますけど、自分は「クラフト作家」です。物作りを通して色んな人物との繋がりもできました。
彫刻家の砂澤ビッキと出会ったのは音威子府村を訪れた時です。
当時中学校のPTA会長だったんですが、音威子府高校では木工機械を置いて教育をしていると聞いて、子供たちの進路の参考になるかもしれないと思って見学に行くことにしました。そうしたら彫刻家砂澤ビッキのアトリエがあると知って訪問したんです。私は彼の名前も知っていましたから、会わなければ!と思って。色々話して、そしたら後日彼が佐呂間まで訪ねてくれたんですよ。それからは親しくなって、息子さんの話や色んなうんちく話を聞いたり、物作りについても話しました。中でも印象的だったのが、彼が私の作品を見て「なんでこれに色を塗っているんだ?」と言ったことです。私の中では汚れが残る箇所に色を塗って覆うなんてあたり前のことだったんですけど、彼にはそうではなかった。おもしろい男だったんです。

この町で見つける自然の儚さ。かたちを変えて人の心へ

私は生まれてからずっと佐呂間町で暮らしていますから、この街に愛着があって、クラフト工芸品も本も舞台脚本も、題材にするのは佐呂間の自然や人物、歴史なんです。
昔、春先の猫柳を見て、その優しい萌葱色の色合いに本当に感動してしまって。猫柳の枝を持ち帰って作品を作ったのが始まりで、今に繋がっています。
例えば折れた小枝は道に転がって朽ちていくけど、そこからまた新しい命が始まる。儚いですよね、でもそういう物に対して愛情をむけて形にしてみるんですよ。すると作品には生き生きと命が宿っていく。私のつくる人形も、目鼻は付けていないけどなんとなくわかるでしょう。
そういう気持ちを込めた作品を気に入って買ってくれた方が、数年立ってからまた作品を購入したいと行って来てくれることがあります。そういった人達の声を聞くと、人の心に残るものを作っているんだな、やっていてよかったなと思いますね。

関連ページ